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+++2008+++
+++5/11+++


悲劇は突然訪れる。

当たり前だ。最初っから知ってたら、何かと「備え有れば憂い無し」みてーな事をする。
何かと備えてると「あー、やっちゃった」ぐれーで済むもんだ。
まーまーそんなもんだよ。
だからといって単車に乗る時、事故に備えて応急処置セットとか積んでやしない。
事故ったらコ−なるア−なるって心構えと自分の行動に対する覚悟が備え。
単車に限らず生きてる間の備えってそんなもんだろう、俺。
特に毎晩の様に単車に跨がりナイトラインを描く男にはそんなもんが必要だ。

だからといって予想外の事態ってのが起った時に「悲劇は突然訪れる」ってなるわけだ。
まーまー前置きはいいから本題に入る。
5月6日に車に跳ね飛ばされた、俺。

何がどーして、そーなったかってぇとだな。
先月ぐれーから久々にスケボーをやり始めてたんだけどよ。
ギャラリーと工房の行き来にもスケボーを使ってまして。
5月の6日も、そりゃーもういい陽気でスイ−ってスケボーに乗ってました、俺。
昼ぐれーにギャラリーから工房に戻ろうと軽快に滑って、工房まで残り50mの交差点。
信号の無いこの交差点は休日ともなれば車の交通量も少なく、
白線で横断歩道が書かれただけで人もたいして歩いちゃいない。
でもって、その交差点を軽快にスイ−って滑って渡り終わろうかって、
その時!!

突然、左からグレーのワンボックスカー
            時速40Hノンブレーキ!!
物の見事に跳ね飛ばされた飛距離5メートル、俺。

事故に遇う瞬間、景色がスローモーションになるってよく言うが、
事故った瞬間の中で毎回思うのは同じ事。
「クソッタレ!!」

跳ね飛ばされ地面に叩き付けられる瞬間に咄嗟の受け身。
も、空しく勢いが強過ぎて後頭部を強打。
コンマ5秒程、カートコバーンとMTVアンプラグドで共演。
デビット・ボウイの「世界を売った男」をカバーし拍手喝采大歓声。
かと、思ったら倒れた周りに集まった野次馬のざわめき。
たいてい事故った時に集まった人達が身体に手を当て、
「大丈夫ですか?」「しっかりして」なんて事をよく言われるが、
激痛と衝撃の中で毎回思うのは同じ事。
「俺に触るんじゃねぇ!!」

痛みがアホみて−に響く中で、声掛けられたってウルセーだけだ。
そして、お決まりのごとく気前良く呼び出される救急車。
メンドクセ−ので、救急車が来る前に歩いて病院に行こうと立ち上がる。
しかし、必死で止める周りの人々。近所の居酒屋のおばちゃん。
加えて、そのおばちゃんに呼び出されたダーさん。
う〜ん、ウザッタイ。せっかく来たのでダーさんに
「ダーさん、コーヒー買って来て」
急いでコーヒー買いに行くダーさん。
しかし、直後に到着した救急車に強制的に積み込まれ、缶コーヒー握ったまま病院へ。

この病院ってのが不思議でならねーんだけどよ。
事故った直後って、全身が痺れてて何処が痛てーのか判んねぇんだよ。
それでも、聞く訳だ
「痛いところは何処ですか?」
即座に答えたね、俺。
「全身!!」

でもって、この運ばれた病院のドクターが連休中に出勤させられてるからか、
カミさんの浮気でも発覚したからか、知らねぇけど、
初っ端から怒り口調で質問してくる。
Dr
「強く打ってるのは、頭?あっ!?」
俺「そう、地面に頭を強く打った」
Dr
「でっ、車にぶつかられたのは、どっち?はっ!?」
俺「左側から」
Dr
「左半身?痛い!?あっ?」
俺「だから、痺れてるから判らねぇって」
Dr
「判らない?はぁ!?」
こんな調子で、質問が続き。こっちも苛ついて来た頃に事故状況の質問。
Dr
「どうやって、車に突っ込まれたの?んっ!?」
俺「スケボーやってたら急に車が突っ込んで来た」
Dr
「何で、スケボーなんかやってたの?」
俺「テメーにカンケーねーだろうが、
              コラァ!!」

・・・・・・・。
Dr「そっ、そうですよね。ごめんなさい」

と、まあこんな具合にイカレポンチなドクターに診察され、
CTスキャンやら、頭蓋骨や首のレントゲン。
Dr
「頭部に内出血がありますが、全治2週間程度でしょう。
                   後は入院して検査ですね」
入院!?

悪いなドクター。俺にそんな暇などありゃしねぇ。
どこそこの受付で入院の手続きがどーとかこーとか、
イカレドクターが言ってる間に、
エスケープ・フロム・ホスピタル!!
事故の衝撃が残ったまま、グラグラする頭で工房に戻り作業。
しばらくすると全身の痺れが箇所箇所の痛みに変わる。
う〜ん、う〜ん。イテ−な。どうしよう?
こんな時は年の功って事でRATのオヤジに聞いてみよう。

俺「あ〜もしもし、ラっちゃん?
        事故って頭と首とアバラがやたら痛てーんだけど」

RAT「そんな時ぐらいは、断食とかしてねーで肉喰って寝ろ!!」

そう、こん時まで断食で五日間程メシを喰って無かった、俺。

RAT「でもな、お前の場合は胃とかも弱ってるから、
                 
 優しい感じの肉喰えよ」

ふむ。
「優しい感じ」と言う事は「IT'S SO EASY」って事でもある。
すなわち「イージーフード」つまりは「手軽な」「お子様向け」って事。
手軽でお子様大好きな肉。
マックのチーズバーガーとかかな?
こんな時ぐらい、RATのオヤジの言う事を聞いてみようと思い、
チーズバーガーセットを喰う。

五分後。
ものの見事に全てリバース。
痛ってぇ!!超痛ってぇ!!アバラが腐る程痛ぇ!!
リバースしながらアバラが一緒に口から出てくんじゃねーかって、苦しみ。
あまりに苦しいんで、そのまま単車に跨がり夜の街へ。
単車の独特の振動で、ズキズキする全身。
ひとしきりナイトラインを描いた後で煙草の煙を吐き出しながら思った。

・・・・・RAT GJOの嘘つき。

昨日、病院に行ったら見事にアバラが折れてたぜ、俺。


+++5/22+++


三十年過ぎた人生の中で肋骨を折ったのは三回目だ。
一回目、単車で旅の途中の山道で対向車に当てられガードレールに突っ込んだ時。
あまりに全身が痛過ぎて、何処が折れてんだか判らね−ぐらいだった。
二回目、喧嘩の時にバットでフルスイングで殴られた時。
何の理由か勃発した抗争の最中で、殴られた瞬間「メギャ!!」って音がした。
三回目、この前スケボーやってて車にぶっ飛ばされた時。

・・・どれもマヌケだ。
しかし、肋骨が折れる原因としてはベタな感じなんじゃ無かろうか?
男が肋骨折る原因なんて、事故か喧嘩かスポーツぐれぇのもんだろ。
って事は、肋骨骨折ベタな原因コンプリートじゃねぇか。おめでとう、俺。

ところで、この「ベタ」って言葉の意味だが、二通り聞く事がある。
一つは「下手」って意味で使用され、某かの事象に対して在来たりな反応を示す事。
つまり、リアクションが当たり前過ぎてつまらない事を指す。
もう一つは「ベター」って意味で使用され、某かに最適な対応を行う事。
つまり、誰もが納得するような当たり障りのないリアクションを指す。
まぁ、日本語って事で考えたら「口下手」とか「べた惚れ」とかが正しいんだが、
日常会話で考えると「下手」って意味よりは「ひねりが無い」って意味で使用されるし、
「べったり」って意味よりも適してるって感じで使用されたりが多い。
そこんとこよ〜く考えて読んでくれ。

夜中に単車乗ったりスケボーやったり散歩したり、
何でってのは関係無しに、ナイトラインを描くのが当然な、俺。
そんなナイトラインの途中に「ベタ」なモンに遭遇したりする。
例えば酔っ払い。例えば外国人売春婦。例えば死に際の浮浪者。
どいつもこいつも一晩限りのストーリーを提供してくれるが、
重要なのは、どのように対応するかである。
百戦錬磨の魑魅魍魎共に相対した時に「ベタ」の意味はベターにしておきたい。
単純に避けて通るという選択もあるが、
せっかく遭遇したモンスター達を逃すのは、それこそ下手であろう。
でもなぁ・・・。
事故から二日後の夜中に遭遇したのは、それこそ在来たり過ぎて中々遭遇しないネタ。
気が付いてても一回シカトしたぐらいだ。

事故の後には必ずって程に熱が出るんだが、その熱冷ましも兼ねて夜中の散歩。
思う様に動かない身体を引きずりながら、ゆっくりとナイトラインを描く。
工房の近くの歩き慣れた道路、誰もいない闇を照らす街灯。
っと、そこに・・・

バナナの皮!?

・・・やべぇ、見なかった事にしよう、俺。
何事も無かったかの様に気が付かなかった事にして通り過ぎよう。
だいたい何で夜中の誰もいない
道路にバナナの皮?
ハバナでもなくバンダナでもなく、
            ましてバンバンビガロナラナラでもない。

いまどき帰宅途中にコンビニでバナナを買って、
帰宅まで待切れずに喰い散らかし皮を道路に捨てる奴とかいるのか?
いなぁぁ〜い!!

って事はだ。
見間違いだったって事だ、きっとバナナの皮じゃなくて、黄色い靴下の片方だ。
で、なかったとしても黄レンジャーの脱ぎ捨てたマスクだ。
黄レンジャーはカレー喰って死ぬってぐらいにマヌケだからマスクを落としただけだ。
もしくは、悪の軍団ゲルゲルショッカーに攫われる最中に、
他のレンジャーへのヘルプミ−信号としてマスクを置き去りにしてったんだ。
だから、そっとしておこう。
まかり間違ってもマスクかバナナの皮かの確認なんてしないでおこう。
もし、確認してバナナの皮だったとしても、
踏んで滑って転ぶなんてベタな事はしないでおこう、俺。

・・・でもなぁ。

もし、万が一にもアレがバナナの皮で、
誰かが踏んで滑って転ぶってのを見たくてたまらない小学生が仕掛けたワナだったら?
なけなしの小遣いはたいて買ったバナナの皮を仕掛けて、茂みに隠れてたらどうする?
こんな人が通らない道路で息を潜めながらドキドキと何時間も待ち構えてたら?
誰かが期待に応えてやらないままだったら、三十歳過ぎても夜中にフラフラ出掛けたり、
焚き火が趣味な歪んだ心の持ち主の大人になってしまうかも知れない。
だから戻って確認だけしておこう。
別に確認の為に見るだけだったらどうって事は無い。
もう一度見に行ったところで、バナナの皮じゃ無くて黄レンジャーのマスクだから。
きっと赤レンジャーが偉そうに悪の軍団ヘルデストロンと闘ってるから大丈夫。
戻ったって何の心配もねぇよ。
踏んで滑って転ぶなんてベタな事になりようが無い、俺。


+++5/27+++


「○○○に似てますよね?」

きっと誰かと対峙した時にこんな会話をした事が一度くらいはあるかと思います。
俗に、生物はカテゴライズ出来ない存在に対してストレスを感じるという説があり、
不安を取り除く為に自分の知識や経験の中から近い物を探し出してカテゴライズする。
要するに対処の方法を早く導き出し、身に危険が及ばない様に構える行動だ。
しかるに、言葉を持った人間はこのカテゴライズをコミュニケーションツールにする。
初めて対峙した相手との間に起る途切れがちな会話が生む沈黙。
沈黙がストレスや不安になる人間は多く、共通の話題を捜そうとする。
更に親近感を深めると同時に相手をカテゴライズして記憶する為に出てくる言葉。

「○○○に似てますよね?」

カテゴライズの他に相手を持ち上げる為にも使用されたりするが、
行き過ぎると○○○に似ていると言うだけで、それが愛称にされたりする場合もある。
正直、誰かに似てると言われて喜ぶ人の気持ちがまるで理解出来ません、俺。
相手としては褒め言葉のつもりかどうだか知らねぇが、
日頃から誰かに似てるとかより、
「AV男優みてーだな」とか「場末のストリップ嬢な感じがする」とか、
あまり固有名詞でカテゴライズしない俺みて−な奴からすると不思議だ。

でっ、よお。
今、通ってる病院の医者が、そーゆー固有名詞でカテゴライズするオッサンなんだよ。
まぁ、それだけだったら何処にでもそーゆー奴はいるし、別に大した事ねーんだけど、
この医者のオッサンが漫画家の
「赤塚不二夫」にそっくりなんだよ。
知ってる?赤塚不二夫。
「天才バカボン」とか「おそ松くん」とか書いてた漫画家。あれにそっくり。
まったくもって、この医者のオッサンの印象は最初っから最悪で、
初めての診察の時に待合室で自分が呼ばれるのを待っていたら、聞こえて来た声。
医者「つぎ〜、高っ・・高っ・・高・・・・」
言葉に詰まっているのに見兼ねた看護婦が代わりに呼んだ。
看護婦「高橋さ〜ん」

・・・・・俺じゃねぇよな。
しかし、看護婦は呼び続ける。
看護婦「高橋さ〜ん!!たかはしさ〜ん!!」
呼びながら明らかに看護婦はこちらを見ていたが、高橋じゃねぇし、俺。
しばしの沈黙の後、別の患者が呼ばれ次々と診察されていく。
だのにいつまで経っても呼ばれない、俺。
いい加減で待ちくたびれ、先程の「高橋」は「高蝶」の間違いじゃ無いかと訪ねる。
看護婦が申し訳ございませんでしたと謝り診察開始。
赤塚不二夫にそっくりな医者が俺にこう言った。

医者「あ〜、高蝶って読むんだ。高橋に似てるねぇ〜」


・・・・まぁ、いい。
よくある事だ。昔っから名前のせいでモメた事はよくある。
いくら赤塚不二夫にそっくりだからといって、頭の中身がバカボンじゃないだろうし。
特に激しくムカツキもせずに診察終了。

後日、二回目の診察の日。
何日間かの徹夜明けでクマだらけの眼、汚れた手と顔に無精ヒゲ、
乱れた髪をセットするのもメンドクセ−のでキャップをかぶって通院。
診察の時にドクター・赤塚不二夫が俺にこう言った。

医者「君は、ジョニー・デップに似てるね〜」

俺「・・・いえ、似て無いです」

医者「そう?似てるよ。似てるって言われない?」

俺「言われません。チェ・ゲバラに似てると言われます」

医者「誰?ソレ」

正直、たま〜に似てると言われる事はあったが、それは汚れ具合と雰囲気が、
「パイレーツ・オブ・カリビアン」の時のジョニ−・デップに被るだけで、
そーゆーカテゴリーにする為に言ってるだけだろう。
実際はまったく似て無いと思ってる、俺。
それよりも何よりも、このバカボン医者がジョニー・デップを知ってる方が驚きだ。
多分「パイレーツ・オブ・カリビアン」を観た事も無く印象だけで言っているのだろう。
しかも、いい歳こいたオッサンのくせにチェ・ゲバラを知らないバカボンぶり。
診察が終わり帰り際にドクター・バカボンが俺にこう言った。

医者「お大事にジョニ−君」



・な・ぐ・る・?・・・。
殴っちゃう?もう、いっその事。
病院内で病院送りにしちゃうバカボンパパ?
いや、堪えろ堪えるんだ、俺。
殺るのはいつでも可能だあんな赤塚不二夫のそっくりさん。
次だ、次の診察の時に「ジョニ−君」って呼ばれたら許す事はねぇ。
赤塚不二夫ネタで逆転するしかねぇ。
心に復習を誓い次の診察日を待つ事にした、俺。

そして、先日の診察の時。
ある意味で俺の頭の中のプランは完璧だった。
「赤塚不二夫に似てますよね」ネタに始まり、
「お日様は西から昇って東へ沈むんですか?」まで、責めどころ満載で臨んだ診察。
待合室で名前が呼ばれるのを待つ間でさえ戦略シュミレーションを行っていたぐらいだ。
看護婦「高蝶さ〜ん、中へお入り下さい」
名前を呼ばれ、診察室へと入る。
目の前には、まごう事無きドクター・バカボン。
さぁ、言え。言ってみろ「ジョニ−君」って言ってみやがれ。

医者「ん〜、調子はどうかね?ジョニ−君」

きた!予想通りにそうきやがった!!
切り返しに思わず笑いが堪えきれなかった、俺。

俺「はっはっはっ。すこぶる悪いですよ先生。
      先生が赤塚不二夫に似てるからじゃ無いですかね?」


瞬間、医者の眼が光り俺にこう言った。


医者「賛成の反対なのだぁ〜」



負けた。
完璧に負けた。
もう、いいよ。バカボンだけはジョニ−君でいいよ。
HEY ジョニ− HEY HEY ジョニ−・・・・・・・・・・・・・・・。







やっぱ、バナナの皮じゃん・・・・・。

その後、どのくらい「ベタ」な結果になったかは、御想像にお任せ致します。


+++5/30+++


五月になって何か大きく物事が変わるのかと問われれば、
変化について答える為に数字の美しさは無視してこう話すだろう。
月の区切り日や時間、年の区切り等、どっかの誰かが昔に勝手に区切っただけだろう。
そんなことない。って言えるかい?
カレンダーも時計も無い世界にいたら朝・昼・夜とか春夏秋冬ぐらいしか判らない。
だから、数字が指し示す変化よりも季節が確実に街を変え、人を変え、景色を変える。
言い換えればそれは対応していると言う事だ。
季節の移り変わりや時の流れと言う大極に対し順応するその様。
いくら時計の針が廻るのを眺めても解らない。
カレンダーを何枚めくっても知る事が出来ない。
デジタルな数字の並びの変化を見てたら感じる事すら無い。
流れの早さは数字で計り示すのでは無く、自らが体感する事でのみ得られる。
情景の変化を解し、移り逝く時を知り、空気の変化を感じる。
ナイトラインを描きながら対応していく自分が居る。

前置きが長くなったがまぁ、いいとしよう、俺。

「男のくせに長電話なんぞしやがって」
一昔前ならそんな歪んだ男の美学を声を大にしてのたうち回るオッサンもいただろうが、
様々な事柄が長時間に渡るディスカッションの果てに発展している現代社会では、
「黙して語らず」が全てに共通する美学では無く、
何処をどのように黙して語らないのかが重要なポイントとなってくる。
つまりは、「秘するべきを解さず語るは人の卑しさ」ってヤツだ。
インターネットの発展と共にブログというツールを利用する人口が増加した事、
その他諸々の情報発信ツールは説明を要しないぐらいに普及しているが、
「黙して語らず」のポイントをまるで履き違えた人が多いのは否めない。
特にそれが情報を発信することを生業としている人間の場合は最悪である。
企業イメージ・媒体イメージ・ブランドイメージ等は、
利用者が何かを感じ、文句や感想を語ったりWALKING BOMBになるのならまだしも、
内部事情を知る外部の人間が個人的観点で情報を漏洩すべきでは無いと思う、俺。
社会活動の中で溜ったストレスを生で相手にぶちまけず、
吐き出す先はインターフェイスで防御された安全圏。
それだけならばまだしも、その安全圏を振り回すのはかなり危険だ。
溜った膿を吐き出した安全圏は一度破れれば、いとも簡単に自分の身を侵してしまう。

かなり話が反れたが本題に戻そう。

男のくせに長電話をよくします、俺。
日中・深夜・早朝かまわずします。でも、たいてー深夜〜早朝で相手は男。
理由はいくつかあるが代表的なのは二つ。
一つは相手との距離が重要なポイントで、単車で30分圏内を超えると電話になりがち。
近い相手だったら会って話す事が圧倒的に多い。
電話にしても会って話しても、ちょっとした用事や疑問の解消のつもりが、
いつのまにやら長い時間を相手と共有してしまうクセがあるので、
自分と相手の所在地が離れていると日頃会わないぶん話が長くなりがちだ。
もう一つの理由は自分が独りの時に相手も独りである場合。
周りに雑音が無い時と言うのは、取り留めの無い会話に時間を消費しがちだ。
特に共通の話題や共通の友人・仕事等があると会話は長くなる。
この二つの理由を自分の普段の動きに当てはめると相手が特定されてくる。
拠点が東京都内では無く、深夜も活動してて、独り身。
更に共通の話題・友人・仕事。加えて、それほど離れて無い年齢。
そりゃあ、話も長くなる。

でっ、そんな相手との長電話の最中。
電話しながらも何か単純な動きを繰り返したり、
長い電話の最中に何気なく何かを転がしてみたりと話には集中していても、
肉体的な手持ち無沙汰からか電話以外の何かをしようとする。
この日の電話の相手もどうやら手持ち無沙汰だったのか、
電話しながら何かをしていた御様子。
携帯電話で話し始めてから二時間近く経ってたのだろうか、
突然。
今までに聞いた事も無い断末魔のような、
壊れたスピーカーから一気に流れ出たフルヴォリュ−ムの高音のような、
例えて言うならば、化け物に襲われる女性の悲鳴と憎悪の果ての男の雄叫びを合わせて、
最大音量のトランシーバーで聴いた感じだろうか。
一瞬。
携帯電話の故障か電波不良かと思ったのだが、
すぐさま電話の相手に何事かが起ったのかと思い安否を気遣った。
すると電話の相手はこう言った。
「・・・水をこぼしてしまった」
水をこぼしたぐらいであんな声が出るものだろうか?
焦りからの言い訳?誤魔化し?
某かの事情を汲んで、黙して問わず電話を切った、俺。
しばらくして、相手から電話があった。
そこで語られた事象については黙して語らずとしておこう。
一つの事象に直面した時にどう対応するかで大きく流れは変わる。
だが、多くの場合に人はその事に気付かない。
気軽に情報を発信出来てしまうからこそ、気易くしてはいけない部分。
言葉を綴って生活するなら気遣って欲しいもんだ。

「沈黙は金・雄弁は銀」って言葉もあるが、
悪いな電話のこっちの悪魔は銀が好きなんだ。
今回の文章がダブルミーニングだってことは言っておこう、俺。



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