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+++2008+++
+++8/8+++


その夜は雨が降ったんだ。
熱に魘されたアスファルトが救いを求めてるんだろう、きっと。
身体から噴き出す汗と空から降る雨の違いが塩分だけだったら、
世界はもっとシンプルな筈なのに。
こんな事を言う俺をイカレテるって言う奴等が大勢いても、
イカレタままの方がずっと好きさ。

その夜は雨が降ったんだ。
汗でベトついた身体とツナギを更にグチャグチャにした雨。
仕方無しに着替えようにも、忙しさに身を任せて放っておいた洗濯物達は、
デモ行進かのようにカビを生やす寸前だった、俺。
仕方無しにスケボーに乗りコインランドリーへ。
いつもは大好きなコインランドリーも、
この時期だけは乾燥機の熱が充満した空間の扉を開けるだけで、
瞬間洗濯機が開発されてくれやしないかと願ってしまうくらいに長居したく無い空間だ。
しかし、着替えが無いままでは仕事をする事も出来ないので、
素直に洗濯機のフタを開け洗濯物を放り込む。
その行為の最中、ふと思った、俺。

「今、着てる物も洗っちまおうかな・・・」

ここで少し考える。
確かに、確かに昔から何度かやった事はある。
しかし、とは言えこの大通りに面したコインランドリーでやっていいもんだろうか?
ここは一つ人生の先輩であるRATのオヤジに電話して聞いてみよう。
が、コールしても電話に出ないオヤジ。
ここで少し考える。
思い出せ、思い出すんだ昔からやって来た事の勢い。
十代の頃から始まった仲間内での罰ゲームの数々。
全裸腕立て、全裸終バス、全裸エロ本自販機、全裸暴走、全裸傘。
忘れられない全裸エネルギーを爆発させた思い出。
答は簡単だ。

昔の俺に出来て、今の俺に出来ない訳はねぇ、俺!!

思うが早いか着ている服を脱ぎ洗濯機へ。
こんな姿を人は何と言うだろうか。
全裸?ヌード?フルチン?一糸纏わぬ姿?在りのままの自分?
構いやしねぇ、何とでも言えばいい。
いくら大通りと言っても、いくらガラス張りのドアと言っても、
こんな夜中にコインランドリーの中を覗く奴などいるまい。
それにだな、コインランドリーには
「スニーカーを洗濯機で洗わないで下さい」
とは、ルールーが書かれていても
「全裸にならないで下さい」
とは、書いていない。
まして、脱ぐのが好きな変態ヤローな訳でも無い、俺。
堂々と全裸で洗濯してるだけだ。

洗濯機のモードが脱水を終了し、洗濯物を乾燥機にぶち込んだ頃、
RATのオヤジから電話が掛かって来た。
熱が篭ったコインランドリーの中で、全裸で汗をダラダラ垂らしながら電話する、俺。
RATのオヤジに全裸ランドリー中だと告げ、
どーせ誰も見て無ぇしなんて言いながら上を見上げて気が付いた。
天井の角で、防犯監視カメラが俺を見つめている・・・・・。
その事をRATのオヤジに告げている最中、
通りの向うから携帯電話で写真を撮っている奴がいる・・・・・・。
その事もRATのオヤジに告げながら、
まーまー誰か入って来たらスケボーのボードで隠してりゃいいしと言うと、
RATのオヤジが俺にこう言った。

「だったら、そのまま外にスケボーでもしに行けば?」

何っ!?

楽しそうだな、それ。

電話が終わり、心持ち興奮しているのは全裸のせいじゃ無く、
新しい事に挑戦する自分だからだ、俺。
・・・・・そう思いたい。

20分ぐらい裏通りを軽快に滑り、はとばしる汗。
そこに自転車パトロールのお巡りさん登場!!


「なっなにをやっとるんだ、アンタ!!」

こういう時に選択肢は二つだ、ダッシュで逃げるか、きちんと説明するか。
昔のなら見事に30秒フラットでお巡りさんが捜し出せない所まで逃げただろう、俺。
しかし、全裸スケボーという新しい世界に挑戦した俺は違ったね。
堂々とこう答えた。

「スケボーですけど何か問題でも?」

その後、きちんと説明したにもかかわらず交番に連行された、俺・・・・・。

住所不定・無職・上半身に大きな刺青を入れてる31歳の男性。
酒を呑んでる訳でもラリってる訳でも無く、全裸でスケボーしてる。
そんな男に吃驚したお巡りさん。
コインランドリーの事、洗濯して着る物が無い事も、家が無いって点で理解されたが、
全裸スケボーに至った意味は理解出来ずに聞いて来た。

お巡り「アンタ、若いニイちゃんが酔っ払ってやってるかと思ったらいい歳して・・・」

俺「残念ながら俺は心が若いんです」

お巡り「・・・だからって何であんな事してたの!!」

俺「夏の・・・誘惑です・・・・」

こんな事を言う俺をイカレテるって言う奴等が大勢いても、
イカレタままの方がずっと好きさ、俺。



+++8/9+++



物事には必ず始まりが在る。すなわち終わりも在る。
本当の始まりって何処からだろう?
心に思った時からだろうか?
言葉にして誰かに伝えた時からだろうか?
行動した時からだろうか?
誰かに見せた時からだろうか?
終わりは何時訪れるんだろう?
考えるのを止めた時?
身体が動かなくなった時?
存在が消滅してしまった時?

もう解っているんだ。
真実を掴んだら心臓の記憶を頼りに先に進むには燃料が必要だって事。
重要なのは始まりが何処かって事よりも何処に向かってるかって事。
重要なのは終わりを危惧するよりも真実を先に進めるって事。

ナイトラインを描きながら向かう新しい場所。
最悪の燃料を積んで新しい世界を創り出す。

GOIN' OUT,GOIN' OUT,GOIN' OUT,GOIN' OUT SWINGIN'
IF YOU GOT THE BALLS TO FIGHT THEN COME ON BRING IT
GOIN' OUT,GOIN' OUT,GOIN' OUT,GOIN' OUT SWINGIN'
DRINKIN' FUEL THE WORST
COME ON COME ON COME ON COME ON BRING IT


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