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+++2008+++
+++11/11+++


愚痴は読んで字のごとく愚かな痴。
「おろかなたわけ」ってな意味です。
愚痴?
愚痴に主はいらねぇ。
存在の意義も無く、その時だけ吐き出されて消え去ってく。
昼間のカフェで、夜の居酒屋で、深夜のファミレスで。
打ち合わせの筈が、愚痴の言い合い愚痴合わせ。
それでもなけりゃ独りで指先から弾き出す愚痴。
画面に向かって、匿名希望で作り上げた安全地帯で文字が羅列。
楽しいの?それ?

主張は張る以上は、責任重大。
「主張とは、存在の表明」って誰かが言った。
誰が?
何年も前から言ってたな、俺。
いくら張っても、主がいなけりゃ主張にならねぇ。
言葉で、行動で、創り出す空気で。
張り方間違ってようが、主は張った奴自身。
そうでなけりゃ主張になんざなりゃしねぇ。
世間に向かって、匿名希望じゃ通せやしない存在の表明。
楽しいぜ。最高に、俺。

主張にも様々な種類があるが、
自分の中に「求めない美学」みてーなのを持ってる人もいる。
仕事に対して報酬を求める。
要は、自己の労働がどれだけの価値が在るかを主張する行為。
最初っから、これだけの価値が在ると言う人。
最初っから、言わずとも評価されると思う人。
日本人の国民性は「求めない美学」だと言われている。
それだけに求める際に自己分析と自己評価が下手だとも。
「奥床しさは、同時に臆病さ」「臆面なさは、同時に愚かさ」
どっちを踏まえて主張するかは自己選択だが、
精神的苦痛にせよ、身体的苦痛にせよ、
苦痛の主張と救助の要請は、応じて貰えなくても早めにしましょう。
求められても迷惑かもしれんが、手後れだと大迷惑です。
今日は、そんなお話を一つ。


町のはずれでシュヴィドゥヴァーさりげなく
日なたぼっこは自販機横 Hey it's a beautiful day
天気の良い朝に煙を吐き出しながら工房前の自販機横に俺。
徹夜明けの身体に陽射しが毒だか薬だか知ったこっちゃねぇが、
気分が良けりゃどっちだっていいだろう。
毎度毎度、決った時間に陽射しを浴びてる訳でもない、俺。
当然ながらその度に朝、遇う人ってのは変わって来る。
向こうがこっちをどんな目で観てようが大した問題じゃ無い。
俺みてーな奴が、視界に入るだけで迷惑ってなら観なけりゃいい。
気持ちの良い陽射しが、誰か個人の所有物で無いのは確かな話なんだから。
それに、どうせ30分もしたら工房に引っ込んで作業を始める。
狂った朝日ぐれー浴びさせろよ。
ぼんやりと辺を観ながら朝日を浴びていて、
最初、その存在にはまるで気が付かなかった、俺。
ふとした瞬間に視界に入った男。
服装と体格から30代後半から40代半ばの管理職な感じ。
額に苦痛の脂汗を浮かばせながら内股でフラフラとした足取り。
乱れた髪型で右手は腹部を押さえながら、
伸ばした左手は支えを求める様に何も無い空間を弄る。
誰がどう観たって、身体の不調を訴えながら歩いてる。
気持ちの良い朝に突然忍び寄る怪しい係長ってトコだ。
ここで、いくつかの想像をする。

1)前夜に飲み過ぎたが、会社に遅刻する訳には行かないサラリーマンか?
2)前夜に腹筋運動のヤリ過ぎで歩くのも辛いサラリーマン風のアスリートか?
3)前夜にカミさんに会社倒産がバレて朝食に毒を盛られたサラリーマン崩れか?
4)前夜に切腹自殺を謀ったが痛過ぎて病院に向かう事にしたサムライマンか?

・・・・・まぁ、どれでもいいや、俺。
その男の行動は何かに救いを求める主張ではあっても、
気持ちの良い朝を過ごす俺に救いを求める主張じゃない。
だいたい、救いを求めてるってのも想像でしか無く、
本当は腹が痛くて会社に遅刻する為の朝練の最中のサラリーマンかもしれない。

一言でも、
一言でも救いを求めたなら何かしてやったかも知れない。
もしくは、少しでも救いを求める眼差しをこちらに向けたなら声を掛けたかも。
いや、後になって判ったが、男にはすでにそんな余裕すら無かったんだろう。
男は、救いを求める訳でも、こちらを見るでもなく、
フラフラと俺の横に在る自動販売機に向かって来る。
・・・?
何か飲みたいのか?それとも此処で吐く気じゃねぇだろうな。
男の「ハァ・・ハァ・・」という荒く苦しそうな息遣い。
自動販売機に対して左手で身体を支え、すぐ横の俺をピクリとも見ない。
二日酔い特有の匂いもしなければ、腹部から出血の様子も無い。
・・・?
何だろうか、この男は?
すぐ隣で苦悶の表情を浮かべる男を放っておくのもどうかと思うので、
声でも掛けようかと思った矢先に男の咆哮!!

「ハッ!・・ハゥヴヴィヴ!!!」

同時に聴こえて来る異音!!

「ヴリ
ョヴリョヴリョヴリョヴリョヴリョ!!!!

うっうぉぉぉっぉぉお・・・・・・笑えねぇ、俺。
だが、それ以上に苦悶の表情だった男は、笑えねぇどころか涙を流していた。
・・・・亀の出産じゃねぇんだからよ。
勘弁しろよな、やれやれだぜまったく。
と、思いながら見なけりゃいいのに男のケツの辺を見ちまった。

メロンパン!?

ケツにメロンパンが入ったみてーになりながら泣いてる男。

・・・・指差して大爆笑しちまった、俺。

今となっては、苦しくてか、悲しくてか、男が泣いてた理由は判りゃしない。
ただ、男はどうする事も出来ずに動かなかった。
そんな男に声も掛けず、工房から取り出したトイレットペーパーを男に渡し、
コンビニの方を指差した、俺。
男は相も変わらずフラフラとした足取りだが、
ガニ股でトイレットペーパー片手に消えていった。
ケツにメロンパンを入れたまま・・・・・。


この悲しみをどうすりゃいいの〜♪
誰が僕を救ってくれるのぉ〜♪
こいつは正に大迷惑♪


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