2007
7月上旬
パリから帰ってきた、俺。

正直言ってパリの飯は不味い。
特に日本食の不味さは郡を抜いて不味い。
そして飛行機の機内食も不味い。
そんな旅から日本に戻ると、
まともな飯を喰いたいと思うのは必然です。

空港から工房に直行し、仕事のチェックと報告事項の確認。
土産話に花を咲かせながら土産を皆に手渡す。
時間も頃合、作業も一段落し、そろそろ晩飯の時間。

普段から飯は皆で喰うのが習わしのようなREFUSE。
当然ながら海外から帰ってきた男には日本食の誘いがあるはず。
まさか
「パスタ喰いに行きましょう」とか、
なにも
「メキシコ料理喰いたいっす」
なんて言うはずはないだろう。
むしろ言われた瞬間に蹴り飛ばすだろう、俺。

仕事を終わらせ皆が業務報告。
そして続けて出てくる言葉。
「ボス、お疲れ様でした。お先に失礼します」
「仕事のキリがいいんで上がります」
「飲みにいくんで、お先に失礼します。ボス」



・・・・・・・嫌われてんのかな、俺。

それとも、これが世に言う社内イジメってヤツなのかな?
コンビニでエビアンとパリジャンサンドでも買って仕事しよ・・・。

2007
7月中旬
旅に出る度に・・・。
思うんだよね「誰か・・・・」って、俺。

何処に行っても楽な旅なんかありゃしないのは、
初めて家出した六歳の時から変わらない。
ハードな時間がお約束されちまってる俺の旅。
でさぁ、旅って帰ってくるから終わる訳じゃん。
目的地に辿り着いて、そこで暮らしてたら引っ越しでしょ?っしょ?
出掛けて帰るまでが旅。
「家に帰るまでが遠足です」って小学生の時に言われたよね?
なんだけどさぁ、
家がない俺には、工房に戻ってきても山積みの仕事と山盛りの洗濯物。
眠る場所が作業椅子か床だと、つい思うんだよね、俺。

「誰か・・・誰か・・・・
腹筋台を買ってくれ

だってよぉ、腹筋台があれば背筋のばして寝れるし、
おまけに腹筋運動も出来るから一石二鳥。
健康な肉体を作り上げるのにこれほど素晴らしい事は無い。
なんてお得なアイテムなんだ。

いや・・・知ってるよ。気休めだよ気休め。
旅が辛けりゃ、戻っても辛い。
戻ってはきても帰る場所がない男に休息は無い。
でも、旅は続く。

帰り道は何処にあるんだ・・・。
真実は残酷だぜ、
だからこそ素晴らしい。

2007
7月下旬
「春になると頭のオカシイ人々が」ってな話をした事がありますが、
よくよく考えるまでも無くそんなの一年中転がってます。
単純に季節によってオカシイ具合が違うだけです。
夏には夏の人々が転がってます。

夜中にチャリンコに跨がり風を切るのは、チャリンコ暴走族。
夏休みが生み出す風物詩。
夏休みどころか一日の休みも無い、俺。
それでも未だに続く夜中のチャリンコ暴走、オーバー・ザ・サーティー。
街には様々な人間模様が吐き出されてる。

深夜を過ぎてREFUSEの前。
仲良く倒れてるカップルが一組程。
死んでいるのか?生きているのか?
服毒無理心中なのか?喧嘩の末に刺しあったのか?
それともただ単に寝てるのか?
いずれにしてもスゲー
邪魔。

あまりに邪魔なので「着火マン」で燃やしてみようかと思う、俺。
そんな邪な心に感付いてかどうかしらないが、女が起きて言う。

「ここどこ?」

・・・少なくともお前の家じゃねーよ。
そう思って見ている俺に気付いた女がこっちを見る。
途端に眼を合わせようともせずに振り返りREFUSEを見る。
途端に眼を逸らして横に倒れてる男を見る。
そして発狂したように叫び出す。

「アッくん!大変だよアッくん!!」

・・・大変なのはオメーだよ。
そう思って見ている俺には構いもせずに女は叫び続ける。
ようやく起きた男がウナダレながら女に寄り掛かる。
気持ち悪そうな男が何事か女に話しかけている。
そしてまたもや女が騒ぎ出す。

「アッくん!駄目なの!!
 ここは駄目なのよアッくん!!」

・・・駄目なのはオメー等だよ。
いい加減にメンドクサクなり女に邪魔だと言おうとした時!!

「アッくん!
こんな恐いトコ、
早く行かないと!!
    アッくん!!」


・・・・・・身体に模様が沢山彫られててゴメンナサイ。
・・・・・・扉が鉄で髑髏の旗が立ってて申し訳ない。

そう思って見ている俺を欠片も見る事無く、
フラフラと立ち上がり去っていく男と女。

さっさと帰れよ、帰る場所があるんだろ。
確かに知らないヤツが外から見れば、
悪魔の臭いがぷんぷん漂ってるんだ。
でも、どんなに恐く見えようが、ここは。
行き場の無いヤツ等の溜まり場さ。

2007
7月末日
路上でくたばってるカラスが送るシグナル
確かに感じ取っていたのに
確かに伝わっていたのに

HEY RUDY お前はまだ旅の途中かい?
HEY RUDY お前のくれたZIPPOは壊れちまったよ
何か足りないような感じはいつもの事
盲目さが罪だと言うなら早く裁いてくれないか
帰り道は見つかったかい?

無神経に消費されるガソリンみたいに
その時が過ぎたら存在すら忘れ
無意味にされちまう言葉達みたいに
その時が過ぎたら何処かに消え

HEY RUDY 昔の仲間が苦しんでるって
HEY RUDY アイツももうくたばっちまった
真実は何処にあるのか解っているのに
人はどうして幼い時の事を捨て去ってしまうんだ
俺には何が出来たんだい?

路上でくたばってるカラスが送るシグナル
帰る所なんてはじめから
あるような気がしていただけ
失うものなんて何もない





(C)HEAT Co,. Ltd. ALL RIGHTS RESERVED.
掲載商品画像等の無断使用を禁止する