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7月上旬 |
パリから帰ってきた、俺。 正直言ってパリの飯は不味い。 特に日本食の不味さは郡を抜いて不味い。 そして飛行機の機内食も不味い。 そんな旅から日本に戻ると、 まともな飯を喰いたいと思うのは必然です。 空港から工房に直行し、仕事のチェックと報告事項の確認。 土産話に花を咲かせながら土産を皆に手渡す。 時間も頃合、作業も一段落し、そろそろ晩飯の時間。 普段から飯は皆で喰うのが習わしのようなREFUSE。 当然ながら海外から帰ってきた男には日本食の誘いがあるはず。 まさか「パスタ喰いに行きましょう」とか、 なにも「メキシコ料理喰いたいっす」 なんて言うはずはないだろう。 むしろ言われた瞬間に蹴り飛ばすだろう、俺。 仕事を終わらせ皆が業務報告。 そして続けて出てくる言葉。 「ボス、お疲れ様でした。お先に失礼します」 「仕事のキリがいいんで上がります」 「飲みにいくんで、お先に失礼します。ボス」 ・・・・・・・嫌われてんのかな、俺。 それとも、これが世に言う社内イジメってヤツなのかな? コンビニでエビアンとパリジャンサンドでも買って仕事しよ・・・。 |
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7月中旬 |
旅に出る度に・・・。 思うんだよね「誰か・・・・」って、俺。 何処に行っても楽な旅なんかありゃしないのは、 初めて家出した六歳の時から変わらない。 ハードな時間がお約束されちまってる俺の旅。 でさぁ、旅って帰ってくるから終わる訳じゃん。 目的地に辿り着いて、そこで暮らしてたら引っ越しでしょ?っしょ? 出掛けて帰るまでが旅。 「家に帰るまでが遠足です」って小学生の時に言われたよね? なんだけどさぁ、 家がない俺には、工房に戻ってきても山積みの仕事と山盛りの洗濯物。 眠る場所が作業椅子か床だと、つい思うんだよね、俺。 「誰か・・・誰か・・・・腹筋台を買ってくれ」 だってよぉ、腹筋台があれば背筋のばして寝れるし、 おまけに腹筋運動も出来るから一石二鳥。 健康な肉体を作り上げるのにこれほど素晴らしい事は無い。 なんてお得なアイテムなんだ。 いや・・・知ってるよ。気休めだよ気休め。 旅が辛けりゃ、戻っても辛い。 戻ってはきても帰る場所がない男に休息は無い。 でも、旅は続く。 帰り道は何処にあるんだ・・・。 真実は残酷だぜ、 だからこそ素晴らしい。 |
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7月下旬 |
「春になると頭のオカシイ人々が」ってな話をした事がありますが、 よくよく考えるまでも無くそんなの一年中転がってます。 単純に季節によってオカシイ具合が違うだけです。 夏には夏の人々が転がってます。 夜中にチャリンコに跨がり風を切るのは、チャリンコ暴走族。 夏休みが生み出す風物詩。 夏休みどころか一日の休みも無い、俺。 それでも未だに続く夜中のチャリンコ暴走、オーバー・ザ・サーティー。 街には様々な人間模様が吐き出されてる。 深夜を過ぎてREFUSEの前。 仲良く倒れてるカップルが一組程。 死んでいるのか?生きているのか? 服毒無理心中なのか?喧嘩の末に刺しあったのか? それともただ単に寝てるのか? いずれにしてもスゲー邪魔。 あまりに邪魔なので「着火マン」で燃やしてみようかと思う、俺。 そんな邪な心に感付いてかどうかしらないが、女が起きて言う。 「ここどこ?」 ・・・少なくともお前の家じゃねーよ。 そう思って見ている俺に気付いた女がこっちを見る。 途端に眼を合わせようともせずに振り返りREFUSEを見る。 途端に眼を逸らして横に倒れてる男を見る。 そして発狂したように叫び出す。 「アッくん!大変だよアッくん!!」 ・・・大変なのはオメーだよ。 そう思って見ている俺には構いもせずに女は叫び続ける。 ようやく起きた男がウナダレながら女に寄り掛かる。 気持ち悪そうな男が何事か女に話しかけている。 そしてまたもや女が騒ぎ出す。 「アッくん!駄目なの!! ここは駄目なのよアッくん!!」 ・・・駄目なのはオメー等だよ。 いい加減にメンドクサクなり女に邪魔だと言おうとした時!! 「アッくん! こんな恐いトコ、 早く行かないと!! アッくん!!」 ・・・・・・身体に模様が沢山彫られててゴメンナサイ。 ・・・・・・扉が鉄で髑髏の旗が立ってて申し訳ない。 そう思って見ている俺を欠片も見る事無く、 フラフラと立ち上がり去っていく男と女。 さっさと帰れよ、帰る場所があるんだろ。 確かに知らないヤツが外から見れば、 悪魔の臭いがぷんぷん漂ってるんだ。 でも、どんなに恐く見えようが、ここは。 行き場の無いヤツ等の溜まり場さ。 |
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7月末日 |
路上でくたばってるカラスが送るシグナル 確かに感じ取っていたのに 確かに伝わっていたのに HEY RUDY お前はまだ旅の途中かい? HEY RUDY お前のくれたZIPPOは壊れちまったよ 何か足りないような感じはいつもの事 盲目さが罪だと言うなら早く裁いてくれないか 帰り道は見つかったかい? 無神経に消費されるガソリンみたいに その時が過ぎたら存在すら忘れ 無意味にされちまう言葉達みたいに その時が過ぎたら何処かに消え HEY RUDY 昔の仲間が苦しんでるって HEY RUDY アイツももうくたばっちまった 真実は何処にあるのか解っているのに 人はどうして幼い時の事を捨て去ってしまうんだ 俺には何が出来たんだい? 路上でくたばってるカラスが送るシグナル 帰る所なんてはじめから あるような気がしていただけ 失うものなんて何もない |