2007
10月上旬
『痛ぇ』

もう何年も俺を悩ます頭痛のヤローがやってきた。
ツアーをやるようになってから、毎年決って夏にはやってくる。
まるで町内会の夏祭り時期に帰ってきて、
後輩に金をせびるヤンキーのようだ。
まるっきし役に立たないうえに、何かと痛いところもそっくりだ。
何故にこの頭痛のヤローがやってきやがるかというと、
単純に単車事故と喧嘩の後遺症って、
一生涯付きまとう馬鹿馬鹿しい話さ。

その、後々まで引きずってストーカーになる
恋愛下手の粗チン野郎みてーのが、
ムカつく事に疲労やストレスによって、
夏祭りにヤンキー引き連れてやってくる。
まったくもって難儀な話だぜ、俺。
しかも、今年はツアーからここまで頭痛のヤロー大活躍しやがって、
忙しければ忙しい程に痛みは増し病院通いを余儀無くされるという、
まったくもって自分に対してアナーキーな事態が更にムカつく。

通ってる病院の医者が検査や注射の度に
「生活とかねぇ〜ちゃんとしないとだめだからねぇ〜」
とか、まるで他人事な感じで言い放ちながら、俺の頭に手を当て
「痛い?ん〜、ここ痛いよねぇ〜」
とか、まるで他人の痛みは知ったこっちゃ無い感じでグリグリしやがる。
・・・・イテ−から病院きてんだろうが。

そんなヤブ医者にムカつきながら処方された薬で過ごす日々。
超過密なスケジュールで食欲も起らず、
ただ頭痛のヤローを黙らせる為に薬を飲む。

『痛ぇ』

頭痛のヤローが少しでも大人しくなったかと思えば、
胃のヤローがやけに存在感をアピールしやがる。
まるで目立ちたがり屋のパンクスのようにトゲトゲとした存在感。
このクソ忙しい時に切腹したい程に自分に対して
アナーキーな肉体がムカ付く。

そんな、頭が痛かったはずなのに腹が痛くなった不思議な現象。
医者に伝えると
「薬飲む前にちゃんと食事とか採ってますかぁ」
なんでも、薬が強くて胃がヤラレルとか、ヤラレタとかで、
メシ喰えって話が固形物を喰うなって話になり、
身体のあちこちが痛くて何がなんだか解らない、俺。
ただムカつきやがる。痛みのヤローが。
男が男なりに何かを成し遂げようって時に邪魔しやがって、
たかだか肉体の危険信号の痛みってだけの分際で
アナーキーにしてんじゃねぇ。
そっちがそのつもりなら、こっちにも考えが在るぜ。

深夜、思い立ったが早いか、
作業を中断し単車で向かうは「肉のハナマサ」。
迷う事無くステーキ肉500gを購入し、
分厚い肉を生焼けの状態でむさぼり喰う。
痛みのヤローに対して示すアナーキーな行動。

食後10分経過・・・・残さず吐いた、俺。

痛みよりも肉体のヤローが反抗してきやがった。
まったくもって難儀な話に他ならない。
気持ち悪さと痛みの中で、ヤブ医者の
「痛い?ん〜ここ痛いよねぇ〜」
ってムカつく声がグルグルとこだまする。

Hey!Doctor 胸に刺したカメラで感情まで映せるのかい?
いつの日か、この頭痛が治ったらその時こそ、
医者の頭を力一杯ぶん殴って
「痛い?ん〜ここ痛いよね〜」
ってまるで他人事のように言ってやる、俺。

2007
10月中旬
腹筋台か、VANSONのボーンジャケットか。
日々、工房で過ごす中で短い睡眠時間を如何に快適にするか?

椅子で寝てると身体が痛い。
床で寝てると身体が寒い。
この、如何ともし難い状態をどうしてくれようか、俺。
そこで考えたのが、
椅子で寝ないで腹筋台を購入し睡眠と筋トレを一石二鳥。
VANSONボーンジャケットで寒さとファッションを一石二鳥。

ポイントとしては、身体が伸ばせる事、寒さが凌げる事。
ボーンジャケット着て床で寝れば寒さも凌げて身体も伸ばせる。
しかも、新品ピカピカのライダースも床で転がって寝てればすぐ馴染む。
やはり、ここはVANSONボーンジャケットか。
腹筋台なら身体は伸ばせる。でもこれからの季節は寒い。
値段的には腹筋台のが安いし、身体も鍛えられる。
しかも、腹筋しながら眠れば身体は暖まった状態で眠れる。
すると、腹筋台で手を打つべきか。

あっ?ベッドって選択肢はねぇーのかって?

だって、ベッドってデカイじゃん。工房にそんなスペースなど無い。
しかも、寝る以外に使い道が少ねーし。
腹筋するには柔らか過ぎだろ?
いくら暖かくても、お前はベッド着て街を歩けるのか?
んっ?
よし、じゃあ歩いてるとしよう。
それで身体を鍛えてると思えば安いもんだとしよう。
でも、お前それで嬉しいのか?
だいたい、そんな不自然なヤツ見た事ねーぞ。
ライダース着て転がってるヤツとか、
腹筋台で寝てるヤツなら不自然じゃない。
おまけにどっちがあっても嬉しい、
つまり選択肢に間違いは無いって事だ、俺。

あっ?家を借りるとかって選択肢はねぇーのかって?

だって、家賃とか高いじゃん。俺にそんな余裕など無い。
一本300円の中古ビデオ買うのに悩むくらいだぜ。
自分の生活など既に燃えるゴミの日の餌食。
コインランドリーが一時の安らぎだぜ。

・・・まぁ、住居不定って言われると、ちょっとだけ寂しいけどな、俺。

2007
10月下旬
まぁ、ちょっとゆっくり話でもしようじゃないか。
口は災いのもと、とか言ったりもするが、
大概の物事と言うのは話し合いで解決出来ると、
どっかの偉そうな人も言ってた。
本当かな?本当にそうかな?そうだとしたらどうしますか?
もし、そうだとしたらどのくらいの物事なら解決できるでしょうか?

例えば「妖怪・一反木綿」を目撃したと言う人がいたら、
必ずのように聞かれるでしょう。

・何時?・何処で?・誰と?・何してた時?
・見間違いじゃないの?・写真撮った?・背中に鬼太郎は乗ってた?

それらにパーフェクトに答えたとしても言われるでしょう。

・写真見せてよ・一緒に確かめに連れてけよ
・鬼太郎はオカリナ吹いてた?

写真を見せても、少しでもピンぼけしてたなら違うと言われ、
現場捜査から始まり、一反木綿とヌリカベのタイマン勝負の結果の確認。
目玉のオヤジが右目か左目か、視力いくつかの検証。
そこまで求められてしまうかも知れない。
そうなってしまったら、最悪の場合オカリナを購入し、
夕暮れ時に独り、鬼太郎が吹いてたメロディーを練習するハメになる。
果たしてこれは口は災いのもと、って事になるのだろうか?
よしんばオカリナを完璧に吹きこなせる様になっても、
何の解決にもなるまい。
つまり、「妖怪・一反木綿」の目撃は、
話し合いで解決出来る物事では無い。

まぁ、妖怪の話ともなれば超常現象みてーなもんだから仕方ない。
そうそう出逢う事すら無いので、せめて妖怪みて−な人の話にしようか。

東京都江東区森下って街にREFUSEが移ってから三年の月日が過ぎたが、
この街には遡る事15年前に先輩が住んでいた。その頃の話だ。
正確には兄弟分の先輩になるので、正確な氏名は知らない。
ただ「イズミさん」って呼ばれてる人だった。
今はどうしてるか知らない。
その「イズミさん」の友達に「ユウヤくん」って人がいた。
兄弟分の先輩の友達っていう、従兄弟の友達の兄貴みてーな遠い関係。
しかし、関係が遠かろうが近かろうが関係無し。
正確な氏名も知らなけりゃ、年齢も住所も知らない。
ただ、年上で新宿辺に住んでるらしかった。今はどうしてるか知らない。
この時点で既に、めったに出逢う事すら無いので妖怪みてーなもんだが、
「ユウヤくん」が妖怪みて−だったのにはワケがある。
単車とハードロックが大好きな、
デ・ニーロの「タクシードライバー」に憧れて、
常にブーツにナイフを忍ばしてる様な男だったが、それはごく普通だ。
さて、「ユウヤくん」のどこが妖怪みてーかと言うと、
外見的に身長が190cmぐれーあって、かなりゴツイ。
そして、魔女にヒゲがはえた様なタイプの強面。
しかし、一番のポイントは、

声が『DEATH METAL』以外の何物でも無い
                 DEATH声だった。

おまけに物凄い早口で喋るので、
初めて会話すると呪いの呪文を唱えられてる様にしか聞こえない。
それを気にしてかあまり人と喋ろうとしないし、
大声で笑わない「ユウヤくん」。
性格はスゲーいい人で、仲間や後輩からも慕われてたと思う。
しかし、この世に産まれ堕ちてから彼女が出来た事は無い。
「イズミさん」は、そんな「ユウヤくん」を気にして、
しょっちゅう合コンを開催したり、一緒にナンパしに行ったりしてた。
ある日の事。
「イズミさん」が合コンを開催するので、呼ばれた、俺。
合コンがスタートする前に「イズミさん」が俺にこう言った。

「ユウヤは、あんまり喋んねーから、お前ちょっと盛り上げてくれ。
ユウヤが気に入ってる女がいるんだよ。俺も何とかしてやりてーからさ。
ちょっと、上手くいく様に頼むな」

よくある話だ、任しといて下さいって感じで、
その日の合コンはひたすら盛り上げる為だけに徹してた、俺。
15年も前の事なので、しっかり憶えちゃ−いねぇが、
序盤戦から盛り上がっていた合コン、
しかし「ユウヤくん」は普段と同じくあまり笑わない。
全員、適度に酒も染み込んだ頃合、女の子の一人が何かを言った。
何を言ったのか聞こえて無かったので面白くも何とも無かった、俺。
ただ、その女の子の目の前に座ってた
「ユウヤくん」が大爆笑!!
瞬間、女の子が軽い悲鳴と共に泣き出した。
それを見て、違う女の子が言った。
「ちょっと、恐い事すんのやめてよ!!」



・・・・・時が止まった。

その日の合コンの帰り道、男達は無言だった。
ただ、合コンの翌日「イズミさん」が溜まり場で言った言葉を思い出す。

「ユウヤ。今度は『DEATH METAL』好きの女の子と合コンしようぜ」

この話を知って「口は災いのもと」だと思いますか?
それとも話し合いで解決できる物事と思いますか?

2007
10月末日
ALL THE LIES THAT YOU TELL
I BELIEVED THEM SO WELL, TAKE THEM BACK
CAN THESE DRY BONES LIVE?
WE'RE ALL GONNA BE JUST
DIRT IN THE GROUND

何年間ならば苦痛に耐えられる?もしくは堪えらる?
その代償がどれだけのものか想像した事は?
想像もしないで口にするのは容易い
あまりにもあまりにも

手にしたものが全て灰になったとて
それが悪い事だと誰に言えるのだろうか
それよりも透明だろうか
この瞬間は透明だろうか

ASH TO ASH
DUST TO DUST
THEY LEAVE NOTHIN' BUT THE BONES
AND THE WORLD DIED SCREAMING





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