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9月上旬 |
夏も終わりですね。 夏が終わって一番困るのは、かき氷屋ではなかろうか。 そんな話はどーでもいいのですが、俺。 終わるからにはウチの組員にも秘密にしていた、 実際にあった工房での恐い話を此処に書き記しておきましょう。 正直、思い出したくもない恐い話を。 その日は早朝から暑苦しい日だった。 夏も終わりと言う話があっても、今年は特に暑い日が続き、 早朝から夕方まで打ち合わせ等で動き回り、 夕方から早朝まで作業する俺の体力を奪うには充分すぎる暑さだった。 そんな暑さが特に苦しい日。 俺は朝から流し続けた汗、銀粉とバフカスにまみれた身体を洗おうと、 いつものように工房の流しの蛇口にホースを繋ぎ水を浴びていた。 汚れを洗い流すと同時に冷却されていく身体。 そんな時にふと思った。 『スイカが喰いたいな』 俺にとって夏場の一つの楽しみと言えばスイカで、 その日も冷蔵庫にはスイカが丸ごと冷やしてあった。 水を浴び、スイカを食べながら一休みしよう。 疲れきっていた俺は一時の安らぎを求めていた。 水浴びを終え、冷蔵庫からスイカを取り出し、まな板にのせる。 誰もいない工房、俺は何も気にする事無く、 洗い晒しの髪の毛から水を滴らせ素っ裸でスイカを切っていた。 丁度、丸のスイカを四分割したところで電話が鳴った。 『うるせぇな』 一時の安らぎを求めている俺はイラついた気分で電話に出た。 現在進行中の新しい企画のサンプルについての電話は長くなり、 スイカを切っているどころではなくデザインの確認やコストの確認で、 受話器片手に工房内を右往左往すること30分。 冷えていたスイカは赤い果汁が滴り、 見た目にも美味しさを損なっているのが解った。 しかし、無駄にするのも忍びないので続けてスイカを切り出すと、 またもや邪魔するかのように電話が鳴った。 『っだよ、コノヤロウ』 こちらの事情等知る由もない相手にまるで罪はないが、 更にイラついた気分で電話に出ると、話ながらスイカを切り続けた。 今度は用件だけを聞き早々と電話を終えた。 電話を終えると共にスイカも切り終わろうかという時、 今度は工房のドアをノックする音が聞こえる。 『・・・ぶっ殺す』 足早にドアに近付き、勢いよくドアを開けた。 その時!! ・・・・・・人間は本当に心の底から恐怖した時、 悲鳴すらあげる事が出来なくなると聞くが、正にそれであろう瞬間。 凍り付いたかのように瞳孔が開いて動かなくなった、 郵便配達のオッサン。 何故なら、オッサンがノックしたドアを開けたのは、 片手に持った包丁から赤い液体を滴らせ 怒りの表情を崩さない 刺青まみれのフルチンの男だったから。 そう、イラ付き過ぎて服を着る事すら忘れスイカを切り、 郵便小包を届けに来たオッサンの対応をしてしまった、俺。 無言のまま小包を受け取り、ドアを閉める時オッサンにこう言った。 「・・・・・誰にも言うんじゃねぇぞ」 黙って小さく頷きながら消えていったオッサン。 思うに怒りとは非常に自分勝手な時がある。 悪いなオッサン。民営化されたら喋ってもいいぜ。 |
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9月中旬 |
ノイローゼになってしまった友達が僕に言う 「あの楽しそうなディズニーランドへ一緒に行こうよ」って 行きたくねー、俺。 ディズニーランドがどんな所か、知りたくないけど解りたくないぜ。 って思ってたんだけどよ。 ツアーも終わり、ギャラリーREFUSEも改装し展示会も終了。 疲れきった高蝶組構成員達に一時の休息を。 なんて甘い思いやりが裏目に出た。 アレは皆で、焼き鳥屋でメシ喰ってる時だった。 俺『お前等、展示会終わったら全員どっか連れてってやるよ、 何処がいい?』 チョ−フ「川とか海がいいんじゃないですかね?」 キッチョム&カゴメ「ディズニーランド!」 俺「でも、ほらバーベキューとかしてーじゃん」 チョ−フ「そうっすよね豚の丸焼きとかしたいっすよね」 キッチョム&カゴメ「ディズニーランド!!」 俺「まー待てよ、ダーさんとかにも聞いてみるから」 その場にいなかったダーさん・130・淳也に電話した、俺。 ダ−「川か海でバーベキューしたいっすね」 130「平日行くならウチの子供は行けないから川か海がいいんじゃねぇ」 淳也「水着の女の子が見れる川か海ですね」 これで川か海が五人。ディズニーランドが二人。 民主的に考えて当然、川か海に行くはず。 だった・・・・・・。 9月11日。 近年では特筆すべきテロ行為だったNYでの惨劇のあった日。 そんな黙祷でも捧げるような日。 ディズニーランドにいた、俺。 無理矢理スケジュールを空ける為の連続の徹夜明け、 朝一から車を走らせ全員をディズニーランドへ。 しかも彼女連れの奴等もいるので総勢12人。 全員入場・速攻で置き去り、俺。 昼飯喰う時に全員集合。 昼食終了・速攻で置き去り、俺。 確かディズニーランド行きが決って、 彼女がいる奴は連れて来るって話になった時。 『俺、一人で何してりゃいいかワカンネーんだけど』 って言ってたら、チョ−フが 「大丈夫ですよ俺が一緒にいますから」 って約束してたんだけどなぁ。 二階建てのバスみてーのに彼女と乗りながら、 俺の事見下してたなぁ。 まぁ、いいや。まぁ、いいぜ。 「スペースマウンテン」とかいうのの謎を解明したし。 アレは宇宙空間じゃなくてコカ・コーラなんだよ。 だからまぁ、いいや。まぁ、いいぜ。 でも僕はその約束を破る事になるだろう 何故なら彼は気が狂ってるから |
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9月下旬 |
喧嘩とかする? 夫婦喧嘩とかそーゆー「犬も喰わない」って、 喧嘩を喰って生きてける生物がいたら食料危機とか 起んねーだろってのじゃなく。 血ぃダラダラ流してタイマン勝負とか喜んじゃうアレ。 「やめとけよ喧嘩なんて、 あんなもん強かろーが、勝とうが偉くも何ともないぜ」 鏡で自分の顔のあちこちにある傷跡を見ると、 そう言ってた兄弟分の事を思い出す時がある、俺。 メリケンサック・バット・ナイフ・鉄パイプ・ドス。 殴られたり刺されたり斬られたりロクデモネー思い出が盛り沢山。 色々あったなぁ・・・。 そんな俺のロクデモネー思い出話しを 山より高く積み上げられる兄弟分達。 たま〜にREFUSEに来ては好き勝手な事をして帰っていく。 まぁ、いい。 それはそれとして別に構いやしねー。 『コイツは昔っからホントに悪いヤツでね〜』 俺のロクデモネー思い出話をREFUSEの構成員に語る。 まぁ、いい。 それはそれとして別に問題ねー。 ダセ−事も間抜けな事も散々やって来たが、 未だに大して変わっちゃいねーから別にいい。 そんな事よりも思い出話の中で喧嘩の話題になると、 必ず一つの謎が頭の中でツイストを踊り出す、俺。 頭突きの事を「パチキ」と言います。 まぁ、実際に頭突き入れたり入れられたりすると、 「パチン」なんてもんじゃねー効果音と感覚がしますが、 言葉の勢い的にも納得がいく。 知る限りでは関東圏なら「パチキ」で通用するはずだ。 でも、なあ。 腿の付け根の外側にヒザ蹴りを入れて立てなくする技。 こいつの呼び名がどうにも東京都内だけでもかなり違う。 一時期、喧嘩の度に確認するぐらい謎だった呼び名。 俺の記憶によると、 世田谷区・江戸川区「モモカン」 大田区・台東区「モモ鉄」 渋谷区・町田・横浜「鬼ヒザ」 新宿区・豊島区「鉄ヒザ」 足立区・市川・松戸「ゲソ突き」 世代や、同じ地区でも呼び名は違うだろうが、 何故、ここまで違う? 「モモ」「ゲソ」が入る呼び名は身体の部位を示してるんだろうし、 「鬼」とか「鉄」は痛さが半端じゃないことを表してるんだろう。 納得できなくもない。 何処の土地が納得し難いかってぇと、 川崎「チャップリン」 どこらへんが「チャップリン」? 入れられると動きがおかしくなるからか? 納得し難いが、なんとなくは納得出来なくもない。 しかし、この技の謎はこっからだ。 俺の出身地ゴミの街・大島じゃーこの技の呼び名が、 四丁目と五丁目で呼び名が違った。(ちなみに俺は四丁目) 大島五丁目「チャランゴ」 おそらくは、ムエタイが元になってる呼び名だろう。 納得し易い呼び名ではある。 でも、なあ。 出身地のクセに30年以上経っても謎な呼び名。 大島四丁目「しなり」 ・・・「しなり」って何? 他の土地で聞いた事ねーよそんなの。 未だに納得どころか、言葉の意味すら理解し難い。 もし、貴方が喧嘩の時、相手に 「しなり入れんぞコラぁ!!」 って脅されたら。 間違いねー。そいつは大島四丁目出身だ。 二度と立ち上がれねーぐらいにボッコボコにしてやって下さい。 |
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9月末日 |
単車に乗る、原型を創る。 単車に乗る、原型を創る。 単車に乗る、原型を創る。 繰り返し繰り返し他にやる事ねーのかってぐらいに、 悪魔の夜に向けて初期衝動が形になっていく。 一ヶ月後にな、俺。 行き場のないヤツラの溜まり場さ。 |