2006
2月上旬
よくさぁ、ショッピングモールとかそういったトコロの駐車場に
その店のショッピングカート、そうカゴの乗っかったヤツを使って
買った物を車に積み込み、元の場所に戻しもしねぇで
帰るヤツっているだろ?
どー思う?
そりゃあ、ちょっとネェよなってなるだろ?
当然、ネェよなって思います、俺。


ちゃんとカゴも持って帰れよ!!

そーです、そ−思います。
ですよねぇ、アナタ?

違う?

ああ、じゃあ違うかもしれないけど、
俺の話を最後まで聞いてからにしてもらおうか。
アナタの判断は。



その日の俺。
御徒町にて打ち合わせ後、単車にて森下へと戻る途中だった。
御徒町の隣には秋葉原という電脳シティが横たわっている。
最近の電脳シティにはメイドや堕天使が多く、
主人の帰りを待ち構えているとか聞くが、それは違う。
秋葉原には俺にとっては映画の街だ。
中古B級ビデオが山積みにされた店が何軒かあれば
後のメイドとか堕天使とか電脳ゲーマーには用は無ぇ。
しかし……。
その日はちょっと違った。
いつもの中古ビデオ屋で、この3年ぐらい捜し続けていた映画を発見。
そのせいかテンションも高くなり、レジを打つオッサンにも
余計に話しかける。

俺『いや〜、いっつも品数豊富だねぇ。
  どんくらいのペースで入荷してんの?』

オッサン「そりゃあ、毎日入ってくるよぁ〜」

俺『マジで!?どっから仕入てんの?
  そんなに毎日レンタルビデオ屋も倒産しないでしょ』

オッサン「あ〜、どっからかはワカンないねぇ〜、
     本社の方でやってるから」

俺『はぁ〜、本社ってどこにあんの?』

オッサン「近くだよぉ〜。しかし、お兄チャンいっつも沢山買うねぇ。
     うちの系列店も近くにあってねぇ。
     ウチは一本300円の中古ビデオだけど、
     ソッチは一本200円だから行ってみたら?」

余計なコトだった、普段なら一本300円の中古ビデオで
別に不満も無く映画を楽しんでいる俺。
「一本200円だから」とかは気にしないで素通りすれば
こんな疑問を抱くコトは無かったのに。
確かにオッサンに言われた系列店に向かう途中で、
同系列の店なのに何故に100円安いのか?
が知りたくて向かっている自分が存在もしていた。

…5分後。
辿り着いたその系列店に入ると、
何故に100円安いのかは一目で理解出来た。
「中古ビデオ」ではなく
「中古エロビデオ」しか置いてねぇ。
男性諸君には解ると思うが、わざわざ中古のエロビデオを
買い求めるヤツなぞ、今だに何故かに売っていると噂のコカ・コーラボトリング社の「タブクリアー」が大好物だと言うヤツぐらいに少ない。
こんな場所に用は無い。
そう思って帰ろうかとした時に目に入った光景。
小太りで30代過ぎ無職。背中にリュックサック。
両腕にカゴを下げ、その中に大量の中古エロビデオ(200円)を
満載する男。
ど〜見ても店員じゃないし、
ど〜見ても本社の人じゃないし、
よ〜く見ても店内にカゴは置いてないし、
よ〜く見ると両腕に下げたカゴの横、
うっすらとダイエーのマーク。


「マイ カゴ in 中古エロビデオ(200円)」

そんな彼にアナタは注意できるのか?
ダイエーのカゴをマイカゴにして、中古エロビデオ(200円)を
大量に買いしちゃいけません!!
ってアナタは注意できるのか?

じゃあ、いい。
注意したければすればいいさ。
でもな、よく考えてくれ、何処に住んでるかは知らないが、
家からわざわざダイエーマークのカゴを持って、
中古エロビデオ(200円)を買いに来てる彼の勇気を!!
カゴを最大限に有効利用し、我が物としている彼!!
アナタはそれが出来ますか?
いや、別にやれと言う気はないです。
ただ、カゴについて考えさせられる、
そんな光景を見ましたと言う話です、俺。


さぁ、アナタの判断は?

2006
2月中旬
2月中旬、帰ってきたハードボイルド、俺。

ハードボイルドとは何か?
第一に独特の渋さを身につける事が重要。
酒はバーボン、タバコはマルボロ。
すするコーヒーもちろんブラック。
第一関門難なくクリアな俺。

第二にこだわりの容姿である事。
無精ヒゲにサングラス、黒い革靴。
粋なダークスーツ。
ブーツは黒だし、いつものツナギもスーツと考える事にして
第二関門訳なくクリアな俺。

第三に謎の多いライフスタイル。
謎の仕事をこなし、住居も人に知れない。
買い物、注文の仕方さえも謎。
仕事内容は人に言わなきゃいいだけだし、
住居なんて最初から存在しないし、
「ウーロン茶」の注文の仕方は
『ダブルオーロングティー』!
完璧だ、完璧にハードボイルドだ、俺。

そんなワケでハードボイルドに生きる2月中旬。
買い物でも支払いは当然ハードボイルド。

「284円」支払い
「千円札」
「591円」支払い
「千円札」
「1827円」支払い
「万札」

そうさ、ハードボイルドに細かい銭の使用は無い。
そうこうするうち積もりに積った一円玉
212枚。
使用歴15年のウォレットが悲鳴を上げる程にパンパン。

しかし、ハードボイルドは貯金箱など持たない使わない。
そうこうするうち重ねに重なる五円玉
23枚。
座るとケツに異様な痛みが走る程にゴリゴリ。

されど、ハードボイルドは痛みを意に介してはならない。
そうこうするうち溜まりに溜った十円玉
37枚。
小銭入れのZipが閉まらない程に限界破裂。
だがな、
ハードボイルドは…………
消費税を……………
恨むぜ…………。



次はいつ帰ってくるかな?ハードボイルド。

2006
2月下旬&末日
この感情を解っている。

いつからか、自分が望むでもなく立つ場所。
それが良くあれ、悪くあれ、前へと進んできた。
言うべき事、伝えるべき事、成すべき事。
どれだけの事が俺に出来た?
時間なんていくらあっても足りないぐらいに感じる。
でも、何故という考えを巡らせる事はない。
前へと進む事を止めるのならば、
新しい景色をこの眼に映す素晴らしさを失う。
そこに理由はないだろう。
進みたいから進むんだろう。
だから自分が望むでもなく立つ場所も、
いつかは振り返る事すらない場所かもしれない。

君が立っていた場所を解っていたかい?
何かを終える事は始める事でもあるけど、
何かを決める事は覚悟して進む前の事。

君を守っていた人達を解っていたかい?
皆が伝えたいのは守る為ではなくて、生きていく為で、
皆が守りたいのはその先にある景色。
新しい景色を眼に映す覚悟が出来たら、
君は好きなだけ前に進めばいい。

光の差す方へ。

俺が景色を眼に映す時、そこに君はいないけれど、
忘れるはずがない。


『お前なんて名前だっけ?』

「野崎 裕です」

『お前、野崎っていうのか。
じゃあ、「のざき」の「き」で「きっちょむ」だな』


こんなクダラネー会話も憶えてる。
きっと忘れずに思うだろう、
『ありがとう』と。





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