7月中旬
ようやく『L,S,D』のRAIN DOG(第一部)のカタログが完成。たかだかコピー屋に頼んで作る。業者向けのカタログに多大な時間を浪費。『十三』広告で世間の話題をかっさらった中茎 勲(潤の兄貴)の作業はスピードで言うとフェラーリより5秒遅い程度なので俺を最大級にイライラさせた。自己満足とサービス精神が入り交じったこのカタログを嫌がる業者に無理矢理送りつけ、さらに世間に公開。文句と罵声を好き放題述べたい奴は勝手にしやがれ。俺は聞かない。

7月下旬
その日、俺は代官山に行った。「聖銀辞典2」の打ち上げパーティーがSOSストアの飲食店で行われるので呼び出された次第である。だがちょっと待て、広告料を払った俺達の金で飲み食い!?しかもSOSストアの店で?フラクタルの原理よりも難解な式が俺の頭の中をグルグルと廻りだしたが、そんな事よりも男たるものパーティーに手土産の一つも持っていかねばとその事に思いを馳せた。会場に到着し、のっけから得意のEGGポーズを決めて現れた俺に羨望の眼差し。そんなナイスガイ丸出しの俺の目線の先にニ本のぶっとい触角をはやしたデフ・ブリードの高橋が!!早速嫌がる彼にEGGポーズを鬼コーチよろしく教え込んで満足する俺。座談会で渡した土産の「電球」(100W使用)をボにボにボニータ・ゴージャス青山に持っていかれてしまった高橋に「クリーム・クレンザー・ジフ」をプレゼント。シルバーの仕上げの使用するよう2時間掛けて説得。最後は-ZORG-の社長に「おでんのだし」をプレゼント。
天より高くジェントルメンな俺は原チャリで帰りましたとさ。
追伸:デフ・ブリードの仕上げが今後変わったら俺のおかげです。

7月末日
三年程前…まだ「REFUSE」が工房ではなく、ちゃんとした店としてスタートする時、一つ不安があった。とにかく強気で始めちまえば何とかしてみせると全くシルバーを作れないくせにやる気充分の当時の俺を不安にさせた存在。それは隣の店が変なおっさんが経営する「カレン」と言うババ服屋だった事だ。それでなくてもボロクソの建物だし、ヤンキーと酔っ払いと不法入国者ぐらいしかいない大島って町でシルバー屋を始めるというのにババ服屋「カレン」は更に俺を苦しめた。しかし、ババ服屋と銀屋が並んでいる様は、目の前の小学校に通う少年少女にも多大なトラウマを与えてくれるだろうと思い、開店に踏み切った。以来、三年間に渡り共同便所を汚しまくり(おっさんは一度も掃除してくれない。)人の店の前にタバコの吸い殻を投げ捨てる「カレン」のおっさんに苦しみながらも何とかここまでやって来た。
7月も終わり、赤字が山より高く積もった「REFUSE」を何とかすべく、不眠不休の労働をする俺を横目に「カレン」のおっさんはどことなく寂し気だった。
そして、運命の7月31日。朝5時まで作業を続けそのまま年に1日しかない休みを楽しむ為に海へと向かった俺。例年のごとく海の幸を密漁して「REFUSE」に戻るとババ服屋「カレン」の様子がいつもと違う!!毎年、海から帰って来た俺が行うバーべキュー大会を阻止するかの様に道には大量の荷物が!ババ服屋「カレン」の店内に目をやるとガランとした空間にマネキン3体と今にも首を吊りそうなおっさん一人。そう、遂にお別れの時がやってきたのだ。ババ服屋「カレン」との激しい戦いの日々を思い出すと目頭が熱くなる。バーベキューをやりながらも思わずそんな想にふけってしまった俺。さらばだババ服屋「カレン」。お前もまさしく強敵だった!!




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